TSUZAKIレポート

「幻の大麦」 奇跡の復活物語

TSUZAKIレポート 元木氏(アラン蒸溜所にて)

皆様はベア種という大麦品種をご存知でしょうか。19世紀末までにスコットランドでウイスキーの原料として広く栽培されたそうです。

その後、効率的なアルコール生産のため繰り返された品種改良で多くの畑からその姿を消していったいわば忘れ去られた幻の大麦です。

そのベア種を種の維持のために大学で細々と継続的に栽培していたものををアラン蒸溜所で特別に2週間限定で仕込んだのです。現行の品種と比べ著しく歩留まりが悪くおよそ効率的な生産とはいかない難物だったそうですが、苦労を重ねた末に生産されたスピリッツは非常に素晴らしくまさに想像を超えた出来栄えであったとか。

ウイスク・イー社(当時)の元木陽一氏はまさにこの復活プロジェクトにアラン蒸溜所の公式スチルマンとして携わり苦労の末「ベア種」によるウイスキーを復活させた一人なのです。

元木氏にお会いしたのは今年2月福岡市内で開催されたイベント会場のウイスク・イー社のブース。お勧めは?とお尋ねしたところ

「これは僕が造りました」

と指差したのが「アラン8年オークニー・ベア」でした。

その味わい今までに味わったことのないものでした。独特の複雑さや香ばしさを持ち「面白い!」と思わず声がでました。

やや地味な印象のアランですがそのスピリッツは実に熱いものがありこれから見逃せない存在です。

アラン8年 オークニー・ベア



「ベア(BERE)」と呼ばれる麦品種は9世紀ごろ、オークニー島を支配していたバイキングによって持ち込まれた

六条麦で、文献上スコットランド最古の麦品種です。その時代の麦としては成長も早いことから、アウターヘブリディーズやシェトランドにも広く伝わりました。

ところが19、20世紀ごろになると北欧から改良された、もっと成長の早い麦品種が多く輸入されるようになり、「ベア」の栽培は一気に減少し、オークニーと周辺の島々を合わせても15ヘクタールに満たないところまで生産が減少しました。

現在は畑を代々受け継いでいる農家が家庭でパンやクッキーを焼くときぐらいしか使用されておらず、今回のプロジェクトのためにAgronomy Institute of Orkney Collegeの協力で特別に栽培されました。

アラン オークニー・ベアはアラン蒸溜所で2004年、試験的に、この希少な最古の麦品種「ベア」を使用し2週間だけ製造しました。この「ベア」は、マッシング(糖化)から手こずり、糖度が上がらず、ろ過工程で頻繁に目詰まりを起こし大変な苦労がありました。

糖度が上がらないということは、通常の麦芽よりもスピリッツの採取量が少なくなります。しかし雑味が少なく、クリアな麦汁を最大限に生かそうと、蒸溜のスピードを極限まで落としました。ミドルカットの幅も狭めた結果、一日で生産されるスピリッツは平均500L以下という大手では考えられないほどの生産量でした。

しかし苦労して出来上がった液体は、想像を超えて素晴らしい出来栄えでした。「純粋」という言葉がぴったりです。8年間、リフィルのバーボンバレルで静かに熟成しました。

グラスに注ぐと、焼きたてのショートブレッドの優しい雰囲気から漂います。ゆったりと目を覚まし、甘美で香ばしいアップルパイが、スウィートジンジャーのアクセントを伴います。期待を込めて一口含むと、ほのかな潮風、クリーミーで、バニラビーンズや麦芽の甘さに思わず目を閉じます。長い余韻で、くすぐったい山椒のようないじらしさに笑みがこぼれます。

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